「では失礼します。瀬名先生、ありがとうございます。」



可愛らしい笑顔を先生に振り撒き、
女子生徒はノートを抱えながら教室の方に向かっていった。



……やっぱり怪しい。

実は文化祭の頃から、
あの子は瀬名先生のことが好きなのではと薄々感じていた。



「お前何突っ立っているの。」

あの女子生徒について考えていた私は、ドアの前から動くことを忘れていた。

「先生、質問あるんですけれどいいですか?」
「ああ、いいよ。」



先生はそう言い、生物準備室の前で私の質問を受けた。



───あの女子生徒には部屋に入れたけど、
私は入れないんだ。


一瞬嫉妬深く感じたが、
まさか先生が意図してそうしてるわけではないだろうと思うことにした。



「ここの計算問題の最後の値がどうしても合わなくて答え見ても分からないんですが…。」

「ここは難しいから捨て問だし分からなくても大丈夫だけど、どうする?」



先生は困った顔をしていたが、
もやもやしたままにするのは嫌だから、
お願いします、と返事をした。