とてもじゃないけど、親しくなりたいから頼んでたとは言えない。

このやるせなさに俺は悲しくなり、呆然としてしまった。


しかしその時俺は自分の中での異変に気付いてしまった。

他の生徒でも新沼の様にあまり親しくなれてない人もいるのに、
何故か俺は新沼にだけはやたらと心を開いてほしいと思っている。

悪い言い方だけど、これだけ生徒がいるのだから数人くらい気の合わないやつがいてもおかしくない。



なのにどうして俺は新沼に固執する?



俺がこの疑問を持ち始めてからというもの、
考えるよりも先に行動に起こしてしまうことがたびたびあった。

例えば勉強合宿の肝試しの時に新沼を誘ったり、
夏休み明けの宿題テストで新沼を起こすのに机を叩けばいいところ耳たぶを引っ張ったり。

教師生活4年目にしてこんなことは初めてだ。
そして、これらの行動をするたびにやはり思うのだ。


"どうして新沼にだけ?"


結局、新沼と和解して自分が新沼を苦手としていたことを打ち明けたあともその疑問は残っていた。

しかし思いがけぬところで、その理由が分かってしまった。