「……でも、私石井君とはお付き合いできません。ごめんなさい。」



石井君と付き合えば先生のことを忘れられて楽になれたかもしれない。

だけど、私はあえて苦しい道を選ぶ。

だって自分が楽した分相手を苦しませるから。



「実は私、好きな人が他にいるの。だけど、そういう人がいながら石井君と付き合うのは石井君に失礼だと思うんだ。
石井君は友達からでもいいと言ってくれたけれど、私ずっと友達以上には見れない気がする。」



心からの気持ちを石井君に伝える。

石井君は悲しさを隠しきれない作り笑いを見せる。



「……そうなんだ。他に好きな人いたのか。
……まあ俺も関わってこんな短期間で好きになってくれるとは思ってなかったから、ダメ元だったけどな。」

「ごめんね、石井君の気持ちに応えられなくて。」

「新沼さんが謝らなくていいよ。隣の席なのに気まずくなるし。
これからも友達としてよろしくな。」



石井君は納得した表情で私のことを見た。



「うん。」



そう言い、私は階段を降りた。