精一杯の見栄。

事実ではあるけれど、真実ではない私の気持ち。

今の私にはこうすることしかできない。

しかしこんなにも冷静に別れ話を切り出せるとは自分でも驚きだ。



『優佳、いきなりそんなこと言うなんて何かあったか？……それとも、手伝わされたことが気に食わなかった？』



先生は今どんな表情をしているのだろう。



「何も…ないです。新学期、教師である先生の姿を見て感じただけです。」

『そっ……か。
………なあ、今からそっち向かいから会わない？』



会ったらボロが出そう。

先生を目の前にしたら泣き崩れてしまいそう。

本当は私だって別れたくない。

けれど、先生のためには別れるしかない。



「……嫌……です。」



そう返事すると、耳元に大きなため息が聞こえた。



『今から向かうから。出ないと家のチャイム鳴らすから、近くの公園まで出てくれる？
多分10分くらいで着くから。』