爽は、生きる意味が分からなくなっていた。
中学時代のたったの一時、数ヶ月間の楽しかった時期にただひたすらに戻りたいと願っていた。
『今まで、騙してきてごめんね。
はじめは、世良の言いなりになっていただけで 意味もなく爽と付き合っていた。
ごめんね……酷いこと、たくさんしちゃったよね。
でも、私……何回かデートとかを繰り返すたびに好きになっちゃったんだ、爽のこと。
けど、もう会えないね。
もう……爽に合わせる顔がないよ。
だから、 "お別れ" だね。
今までありがとう』
という友真からのメール。
そのメールを受け取った後、爽は1度だって 友真に会っていない。
友真は学校を辞めた、と後から担任に知らされた。
「何処から、悪かったんだろうな……。
何が悪かったんだろう。」
爽は目的地に向かうまで、何度もなんども そう呟いた。
「なぁ、莉乃……お前には 俺の何処が悪かったのか、分かるんだろう⁇」
莉乃との初デートの場所、莉乃の最期の場所で爽は呟いた。
見通しの良い崖。
爽はその淵に座り、海の底を眺めていた。
何秒、何分、何十分ー……。
そして、フラりと立ち上がった。
「……莉乃、待っててくれ……父さんも、母さんも……」
爽は頭から 海の底へと向かって、落ちていった。