「本当は受け入れたいんでしょ?
強がんなくていいよ。
桜子が俺らを信じる覚悟があるなら、俺らは絶対に桜子を裏切るようなことはしない。
あとは俺らが信じさせるだけじゃん。

約束するよ。俺らは絶対誰かを殺したりしない。
傷つけちゃうことはあるかもだけどさ、俺らはその程度で離れたりしない。
快斗だって、桜子に好かれてないのわかってるのに離れないでしょ?
俺らも快斗と一緒。
どんだけ桜子にきついこと言われても離れない。
俺らに桜子が必要だと俺は確信してる。
きっと蓮も快斗もね。
俺らは桜子のために一緒にいようなんて思ってない。
だから桜子も、俺らのことなんか気にしなくていい。
自分が幸せだと思える場所にいりゃいいんだよ。

誰かを幸せにしたいなら、まずは自分から。
自分を幸せにできないやつが誰かを幸せにすることなんかできない。

今、お兄さんにしてあげることがあるとすれば、それは桜子が笑顔でいること。

桜子が幸せなら、こんな暴走族と仲良くしてたって、お兄さんはなにも言わないよ。
なんて、俺が言えたことじゃないけどさ。」


私は、ゆっきーさんの話を、地面に咲く花を見ながら聞いていた。
ひたすらお母さんのためにと頑張ってきた私がバカみたいで
自分の幸せなんか考えたこともなかったのに…


「ほら、顔あげろよ。」


そう言われて、私はまた空を見た。


「きっと今お兄さんも桜子のこと見てるよ。
桜子が幸せになるのを、ずっと見守ってる。」


見上げた空はとてもきれいだった。
オレンジ色に染まった空が、向こうの方で闇に変わろうとしていた。


「私、大津くんのことが好きかもしれません。」


「え?」


「だけど、まだ怖いです。
だからその感情をないことにしています。
私は今、すべての感情に蓋をしています。」


「そっかー。寂しいね。
感情がないとさ、嬉しいとか楽しいとかも感じられないでしょ。」


「だからいいんです。
もし、この気持ちを自覚してしまったら、次は失う恐怖を抱えなきゃいけなくなるから。」


もし、私が大津くんを好きだと感じたら
きっと私は大津くんを欲しくなる。

だけど、大津くんを失ったら、きっと私はこの人たちともいられなくなる。
大津くんを失ったときの代償がとても大きいんだ。