「受け入れようとは思ってる。
………だけど、心のどこかで"ダメだ"って、私を引き留める。
私のお兄ちゃんは私を庇って死んだ。
それなのに、私だけが楽しんでていいのかな
お兄ちゃんはもう遊ぶことすらできないのに
私だけが…って。

………暴走族を憎んでることで、お兄ちゃんを忘れずにいられる。
憎んでることで、お兄ちゃんへの恩返しをしてるつもりでいる。
それがたとえ間違っていたとしても、それをやめる術を私は持っていない。

私が暴走族と仲良くしたら、お兄ちゃんへの裏切り行為になる。
あなたたちがあの暴走族とは別だと知っていても、今日みたいにカツアゲをしている人を見ると、やっぱり同じに見えてくる。

………だから、私はあなたたちを信用できない。」


私が暴走族と仲良くしていたら、私はいったい誰にこの悲しみをぶつけたらいいんだろうか。
被害者遺族ができることは、この憎しみを誰かにぶつけることしかできない。


「………そっか。
桜子が本当にそれでいいと思ってるなら、俺らはもう近づかないよ。
快斗にも、蓮から命令が行くと思う。

だけどね、人間は忘れる生き物だけど、大事なことは決して忘れない。
………忘れられないはずだよ。
たとえ桜子が俺らと仲良くしてもね。

俺は、悲しいことがあったらめいっぱい楽しむことも大事だと思う。
じゃなきゃさ、お兄さんはなんで桜子を庇って命を落としたの?
桜子に人生楽しんでもらいたいからじゃないの?
ずっと笑っててほしいからじゃないの?
桜子がそんなんじゃ、お兄さんも死ねきれないよ。
それどころか、きっと自分を責めてるかもしれない。
桜子がこんなになってしまったのは俺のせいだって。
お兄さんにそう思わせないためにも、桜子は人生楽しんで、笑ってるのが一番なんだと俺は思うよ。」


「………ゆっきーさんは、私が変わったら友達になれますか?」


「はは、そうだね。
正しいことを正しいも言える
間違ってることを間違ってると言える
当たり前のことが当たり前にできる桜子がたまに羨ましいから。
………俺の実家は元々本屋だったんだけど、潰れたんだよね。
万引きで。
だから…たまに隼斗が万引きしてくんのとか本当に許せないんだよ。
だけど俺はなにも言えない。しらけるから。
ああいうときに桜子がいたら、きっと俺の分まで隼斗を怒ってくれてたんだろうな。」


ゆっきーさんは儚げな目をして、空を見上げた。


「……その後、ご両親はどうしたのですか?」


「元気に働いてるよ。
生活は結構厳しいみたいだけど、俺を名堂に通わせるために頑張ってる。私立だもんな。
………店やめたときは本当にどん底だったけど、俺が名堂に入ったことを誇りに思ってるから、俺も勉強は頑張ってるけどね。」


「………そうなんですか。
いいご両親ですね。
私も本当はその予定だったんですけどね。」


私も、名堂に入ってお母さんを喜ばせなかった。