「かーのじょ。なにしてんの?」


それから何時間かたった頃、私は軽い男の声で前を向いた。


「………ゆっきーさんですか。」


「はは、ナンパじゃなくてごめんね。」


「ナンパされて喜ぶ女に見えますか」


「見えないね。」


でしょうね。


「……なにか用ですか?」


私の隣へ座ろうとしているゆっきーさんに、すかさずそう声をかけた。


「用っていうか、気になったから。
急に帰るし、快斗なんてまたキレそうでやばかったよ。」


「キレそうって、誰にですか?」


「最初は隼斗。
あいつ本当にスカートん中覗こうとしてたからさ。」


なんて楽しそうに笑ってるけど、笑うところではない。
私の下着をなんだと思ってるんだ。


「だけど、隼斗がそんなことで桜子が帰るほど怒るか?ってなって、快斗が考え直して桜子と話してた蓮を疑ったんだよ。
蓮のやつ、仲間と思ってないって言ったんだって?」


「……まぁ…
でも本当のことですから。」


「でもさ、快斗がそれ聞いてまた怒って
桜子は、本当は俺らみたいな暴走族なんか嫌いなのに一緒にいてくれてるのは、少しずつ俺らのことを受け入れようとしてくれてるからだって言ってさ。
快斗のやつ、本当に桜子に嫌われたくないのか知らないけどめちゃくちゃ桜子のこと庇ってて、
やっと"暴走族"としてじゃなくて、俺らのことを見てくれるようになったのに手放すようなこと言ってんじゃねーよって言って、店出てったんだよ。
多分、今も桜子のこと探してるんじゃないかな。」


「え?
………でも私、ここに2時間くらいいますよ?」


「はは、バカだよね。
まさかこんな近くにいるとは思ってなかったんじゃない?

快斗さ、蓮を説得するためにいろんなこと言ったんだよ。
そしたら蓮も心動いたのか今は蓮も探してる。
隼斗もね。

………暴走族ってさ、本当に弱虫の集まりなんだよね。
みんなでいるのが楽しいってのももちろんあるけどさ
弱いからこそ集まって、強く見せてる。
蓮なんかさ、ずっと仲良かった中村龍一に裏切られてるわけだし、そういう人を信じることに人一倍臆病になってんだよ。
だからこそ、裏切り者には制裁をって言って、みんなを縛り付ける。
ブラスパの中であいつが一番人を信じることができないやつなんだよ。」


「…でも、ゆっきーさんとオチケンさんは黒崎くんと出会ってまだ1年くらいですよね?
どうしてそんなに仲が良いんですか?」


「それは、俺らは蓮と仲が悪かったから。」


私の質問に、ゆっきーさんは笑いながらそう答えた。