だから、俺はそれから毎日桜子ちゃんに話しかけた。
どんだけうざがられても…
学校がどんだけ楽しい場所か知ってほしくて
…………ついでに俺の魅力にも気づいてほしくて。

いつの間にか、俺の頭の中は
桜子ちゃんでいっぱいになっていた。


「あ、桜子ちゃーん!!」


廊下で見つけた桜子ちゃんに、俺はでっかい声で話しかけた。
こんだけでかい声なら必ず足を止めてくれるから。


「うるさっ…」


「もう帰るとこでしょ!?
俺も一緒に帰る!!」


「図書館で勉強するだけだから。
ついてこないで。」


「じゃあ俺も図書館いこーっと。」


「だからついてこないで。」


「俺も本が読みたいだけだもん。」


「…………なら、もっと離れて。
別の道で行って。」


「もー、なんでそんな俺のこと避けるわけ?」


「…………一緒にいるところを見られたくないだけ。」


そういう桜子ちゃんの表情は、とても辛そうだった。


「…もしかして束縛すごい彼氏がいるとか?」


「は?」


「あ、違う?ならよかったー。
桜子ちゃんに彼氏がいたら俺どうしようかと思ったよ!」


そんな俺の言葉はもうシカト。
ま、慣れたけど。


とりあえず仕方ないから、学校を出てからは桜子ちゃんの隣はやめて、後ろを歩くことにした。


「…………そのストーカー行動、やめてくれない?」


「い、今!!初めて桜子ちゃんから話しかけられた!!
やべー!感動なんだけど!!」


俺がそういうと、桜子ちゃんはすげーうざそうな顔をしてまたスタスタと歩き出した。


「快斗!」


それを追いかけようとしたら、前から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「あれ、蓮じゃーん。どうしたの?」


「別に。見かけたから話しかけた。
…………なんか用?」


俺に話しかけながら近づいてくる蓮と、そんな蓮をずっと見つめる桜子ちゃん。


「あ、いえ…」


…………俺のことはあんな見ないくせに。


「まぁいいわ。
快斗、今から行くよな?」


「え!でも俺桜子ちゃんと遊ぶんだよ!」


「は?誰それ。」


「あぁ!桜子ちゃん待って!」


そんな俺の呼び止めには桜子ちゃんは聞く耳持たずで、あっという間に行ってしまった。


「もー!蓮のせいで行っちゃったじゃん!!」


「はぁ?
そんなことよりさっさと行くぞ。」


「俺は今から図書館に行くんだよ!」


「へぇ、俺に逆らうのか。」


「あ、いや…
……わかったよ。行きゃいいんだろ。」