椅子を持ち並ぶという事になり
廊下に並ぶとやはり静かになった。
ここの中学校はそれが礼儀らしい。
そして、一年の頃の担任が

「じゃあ出発しますよー」

と大きな声で言い、立てと
手で合図するとザワッとみんなが
椅子を持ち、立ち上がった。
私も無論立ち上がる。

行く途中の会話では
“ イケメンな先生来るかな ” とか
“ 多分禿げしか来ないよ ” とか
みんな楽しそうだった。そんなことよりも
私は体育館の懐かしい匂いにうっとりした。
まあ体育は嫌いなので参加しませんが。

体育館に着くとそわそわしだす周りを感じた。
やはり気になるのは先生方のことだけらしい。
“ イケメン来い〜 ” と女子が言うと
“ 禿げ来い〜 ” と男子が言う。
軽いヤキモチだろう。私は思わず笑った。


「静かにしてください」

体育館に突然響く生活指導の低い声。
私達は一気に静かになった。

「起立」

ざっとみんなで立ち上がった。

「只今より、冬休み明け
始業式を始める、礼。」

深く頭を下げ、3秒後に頭を上げた。

「着席」

女子のスカートを直す音が体育館に響いた。

「今から新しい先生が入場します
大きな拍手で迎えましょう。」

盛大な拍手が体育館を呑み込んだ。
6人の先生方が入ってきた。
1人目は50代くらいの男の先生
2人目は20代くらいの男の先生
3人目は20代くらいの女の先生
4人目は30代くらいの男の先生
5人目は校長先生であろう先生
そして、6人目で私の心は高鳴った。
特に変哲もない20代くらいの男の先生
だけど、なぜかドキドキした。

そう、私はこの先生に一目惚れをしたんだ。

「先生方は壇上に上がり、
椅子に座ってください。」

そう言われると校長先生らしき人が
一番最初に壇上に上がり、その後を
他の先生方が着いて行った。
その時だってその先生から目が離せなくて、
目が合った。柔らかく微笑んだ。

その時本当に確信した。


私は本当にあの先生に、まだ
名前も知らぬ先生に恋をしたんだ、と。