「見つめてない。呪文唱えてるの。」


私は陽祐の顔をちらりとも見ず、秀太の後頭部をにらんで呪文を唱え続ける。




「え?呪文?どんなどんな?」


楽しそうに聞いてくる陽祐に



秀太にも聞こえる声で


「秀太の髪の毛なんて燃えちまえって呪文。」



「え、何それ。秀太髪の毛燃えちゃうのか、かわいそー。」


ケラケラと笑う陽祐。




そして、秀太は振り向いて


「んなもん、燃えるわけねーだろ。

それと、香織。そんなに睨まれるとハゲるから見んな。」


と、睨んで言ってきた。




だから私も


「ハゲろハゲろー、ハゲちまえー。

つるっつるの、カッパになっちゃえー。」


って、メロディーに乗せて、秀太に返してあげる。





「じゃあ明日、秀太にきゅうり10本買ってこなくちゃな。」


それを見ていた陽祐は、笑顔で私に向かって提案してきたから



「10本と言わずに100本にしよ!」


私もノリノリで楽しくなりながら、陽祐に乗っかって答えた。




そしたら陽祐に



「今きゅうり高いの知らないのー香織。

100本買ったら財布の中空っぽになるよー。」




急に現実的で主婦みたいな話をされ、軽くバカにされた。