「宮野、消しゴム持ってる?」


「持ってる!忘れちゃったの?」


「うん。なんか入ってなかった。」


「私2個持ってるから、これ今日一日使っていいよ。」


「まじ?ありがとう。」


こんな些細な会話も覚えるようになったのは、きっと紗英のことで考えてるからだよね。


「俺が読んでる漫画に、お前に似てる女が出てくるんだよ。」


「うそ!どんな子?」


「キャラで言うとドジっ子。」


「待って、悪口?」


そうやって笑い合うのはもう自然と当たり前になっていた。多分紗英の気持ちを知らなくても、私は佐倉くんのことを好きになっていたかもしれない。その好きは、クラスメイトとして。


「ねぇ、紗英のことどう思う?」


直球過ぎたかなと、言ってすぐに反省した。


「大河?あいつ元気だよな。」


「ん〜間違いではない。」


「顔は可愛いけど。」


なんでかな。嬉しいはずなのに、少しだけ胸がチクッとした。私はそれに気づかない振りをして言葉を返す。


「可愛いよね!やっぱ男の子から見てもそう思うんだ〜。」


「なんで大河の話?」


「え?あっ、いや〜友達の話したくて!歩美のことも聞こうと思ったよ!歩美のことはどう思う?」


「番長って感じ。」


「あははっ。それ言ったら歩美怒りそう。佐倉くんほんと面白いね。」


「言ったらお前が笑ったこともチクる。」


私の下手くそな言い訳のせいで歩美に変なあだ名が付けられてしまったけど、また佐倉くんの面白いところが見れた。


紗英には早く教えてあげよう。好きな人に可愛いって言われるの、きっとすごく嬉しいんだろうなぁ、どんな顔するかなぁ。