「……。」


なんだろ、変に緊張する。
佐倉くんはずっと授業を聞いていて、特に話しかけてくる様子もなかった。


「じゃあこの前の続きから。また班で話し合って意見をまとめて〜。」


え?なんのこと?
意識しすぎて全く話が入っていなかった。
私の頭にハテナが浮かんでるなか、みんなが席を横向きにしてグループの体制を取り始めた。


「私は絶対こっちがいい!」


「いや、お前は何も分かってない!こっちの方が感想文書きやすいだろ!」


話し合いのテーマは今度、班ごとに行く社会科見学の行き先だった。
紗英が先生に、前の班で話し合わなくていいのかと聞くと、まだ話し合いは二回目だし今の班に合わせてくれと言うので、私はみんなの話に耳を傾けていた。


「あははっ。」


二人の会話に笑ったのと同時に、佐倉くんも笑った。それをきっかけに話しかける。


「佐倉くんはどっか行きたいところないの?」


「うーん。とくに。」


イメージどおり、優しくて落ち着いた声でそう答えた。


「なぁ!宮野はなんか意見ない?」


斜め右前の根本くんはさっき言ってたことから予想すると、行き先よりもそのあとの感想文を書き上げることが大事で、それを完全に目で訴えられ、


「んー、私も感想文書き易いところがいいかな。」


なんて答えてた。


「ほらな!ケーキ屋さんなんて一人で行ってろ!」


「ひどーいっ!もういいよショッピングモールで!」


「あははっ。」


今度は佐倉くんの顔を見て、二人で笑った。いつもと変わらない、なんてことない時間だった。