「……かわい、」



やっと唇が離れて、思い出したように深く息を吸う。

……心臓、止まるかと思った。



どうしていいか分からず、ただ涙目で唯くんを見つめる私に、ふっと笑った唯くんが呟いた。


可愛いなんて、いつも言わないくせに。
こんな時だけ、そんなこと言うなんてずるい。



「もっとかわいい顔見せて」



不敵に笑う、いじわるな彼。
肌を掠める、温かい手。


唯くんが触れるたびに、きゅんと心の奥が鳴る。



「ま、待って……」

「やだ」

「やだって、」

「柑奈も俺のことだけ見て」

「っ……」



甘くて、優しくて、ドキドキして。

ドキドキしすぎて、なんだか意識がふわふわしてきた。



「……」



大好きな人の腕の中で。
ああ、なんだか、幸せな夢が見られそうだ。