『あれ、そういえば今日は親いないって言ってなかった?』
「うん、そうなの、1人だから……」
『……平気?』
本当は全然、平気じゃない。
さっきからお布団を頭までかけて、耳を塞いで、雷の音が聞こえないよう過ごしていた。
これからお風呂に入らなきゃいけないし、ご飯も食べなくちゃいけない。
ベッドから出るのも怖いのに。
……でもそんなこと言われたって、唯くんは困るだろう。
「今、声聞けたから大丈夫」
『……今から行こうか』
「え!?」
『歩いて行ける距離だし、行くよ』
「で、でも」
『電話してくるくらい怖いんだろ』
「……そう、だけど」
『頼れよ、彼氏なんだから』
「っ……いいの?」
『じゃあ、20分くらいで着くと思うから、それまで頑張れるか?』
「うん、頑張れる……」
唯くんが来てくれる。
唯くんに会える。
そう思っただけで、頑張れる気がしてくる。
唯くんとの電話が切れて、ふと我にかえる。
待って、唯くんがうちにくるの!?
ど、どうしよう!
家の前まで送ってくれたことは何度もあっても、家の中に入れるのは初めてだ。
しかも、ふたりきり……!