「…あ、いか」
靴を脱ぎ、近寄ってくる先輩に後退りする。
「…そこどいて下さい」
震えそうになる声を必死に隠し
先輩から目をそらす。
「愛花、待って」
それでもどいてくれない先輩を
「だからどいて下さい…!」
初めて睨んだ。
「……っ、待ってくれ、話がある」
腕を掴んできた先輩の手を思いっきり振り払い
「私には話すことなんてありません…!」
そう言い放っても、まだどいてくれない。
なに、なんなの……
今更なに、、
「お願いだ、聞いてくれ」
何でそんな目で私を見るの。
そんな悲痛そうな目で。
先輩がそんな苦しそうな顔をする理由がわからない。
…私を裏切ったのは先輩でしょう。
一回深呼吸をして先輩を見上げる。
「……何ですか。手短にお願いします」
息がしづらい。
苦しい。
「……行かないでくれ」
先輩のかすれた声が耳元に響く。
「……な、んですかそれ」
なんで。
「…愛花がいないとだめなんだ」
なにそれ。
「また一緒に暮らそう」
なにそれ。
…なにそれ。