……胃が、いたい。
来ちゃったよ、来てしまったよ。
目の前にあるアパートを
見上げてため息をつく。
でもここで渋っていても仕方がない。
「…行ってくるね」
隣にいる日向君にそう言い
アパートの階段を上っていく。
ちなみに日向君には
私一人で行くと言ったんだけど
荷物を持つ係としてついてきてくれた。
私が荷物をまとめている間、コンビニで待っていてくれるらしい。
見慣れた扉の前に立ち鍵を出す。
この鍵とも今日でお別れ。
鍵穴に鍵を差し込み、回そうとしてその動作をやめた。
……勝手に入るのはまずいかな。
うん。やめておこう。
そっと鍵を抜きインターホンを押した。
嫌な緊張感と共に先輩が来るのを待つけれど、一向に扉が開く気配はない。
それどころか中から物音ひとつしない。
…いない、のかな。
……それなら先輩にメールを送って部屋に入ろう。
『愛花です。部屋にある私の荷物をまとめたいので入らせてもらいます』
メールを送って、なんとなく受信欄を見れば
先輩からのメールが山ほど届いていた。
気づいていなかったわけじゃない。
でも開く気にはなれなかった。
多分、これからも開かない。
今送ったメールが先輩に送る最後のメール。