「てめぇっさおりに何した⁉︎」
俺はアズマの胸ぐらを掴んできつく睨んだ。
それでもアズマはしれっとした態度だ。
「別に何もしてねーよ」
「嘘言うな‼︎てめぇいい加減にしろよ。さおりにまで手出すな‼︎」
アズマの胸もとから手を離すと、アズマは後ろによろめいた。
「もう二度と、俺の前にもさおりの前にも姿を現わすな」
下を向いているアズマに、そう吐きすてる。
すると、アズマは肩を震わせて笑い始めた。
笑いながら俺に背を向けて玄関の方へ行く。
その笑い方に背筋に寒気が走った。
そして、玄関の前で一度足を止めて振り返る。
その顔はもう笑っていなかった。
「拓夢…大切なものの守り方を間違えない方がいいよ。俺みたいに」
それだけ言うと、部屋から出て行った。