モンモンシューは遠慮することなく、それに向かって飛んでいくが、バルジはそれを放りあげることなく、テーブルの上に置いた。

 モンモンシューはちょこんとテーブルに降り立ち、バルジから貰った餌を咥え、おいしそうに食べだした。

 まだ足りないのか、バルジを見つめて催促すると、また同じように肉をちぎって与えられた。

 バルジはモンモンシューが満足するまで与えてやった。

 バルジの瞳は、モンモンシューを深く見つめている。言葉はなくとも、そこに可愛がる愛情が湧いているようだった。

「モンモンシューにまで気を遣って頂いてありがとうございます」

 ジュジュは申し訳なさそうにしていると、カルマンが言った。

「バルジは動物が大好きなのさ。あんな楽しそうにしているバルジを見るのは初めてかもしれない」

「えっ、楽しそう?」

 バルジは無表情だった。

 モンモンシューは次第にバルジの皿の近くに寄り、すっかり心開いている様子だった。

 バルジもモンモンシューが自分の皿の前に居ても嫌な顔をせず、好きに食べさせては時折頭を指で撫ぜている。

 その光景は意外と違和感がなかった。

 モンモンシューは本当はバルジよりも数倍でかいドラゴンであるが、本当の姿を見たら、皆驚くに違いない。

 モンモンシューもあの小さな体では弱い生き物となってしまっただけに、本能で生き残ろうとして媚びてしまうのだろう。

 特にバルジには安心させる何かを感じ、懐いている様子に見えるところを見ると、バルジは動物に好かれる魅力があるのかもしれない。

 ジュジュもまた、バルジが他の人達より口数が少なく無表情であっても、それが却って落ち着き安心感を植えつけるものを感じていた。

 無駄な要素がなく、素朴で泰然としている態度が男らしいとすら思えるようだった。

 その雰囲気が、助けて貰った時の様子と再びどこか通じるものを感じさせた。

 ──もしかして、あの時の人はバルジ?

 何一つ言わないだけ、ジュジュは気になった。

 バルジは野生的で厳つい顔立ちではあるが、ジュジュは顔など関係ないと思う。

 とにかく、自分があの時頂いた感情が大切であり、その人がどのような姿であってもその人を見つけたいと思う気持ちが強かった。

 一体この中の誰があの時自分を助けてくれた人なのか、ジュジュはそれがとにかく知りたく、賑やかに食事をしている男達の姿を目で追いながら、フォークを口に運んでいた。