マスカートはやるせなく溜息を一つ吐くが、目の前の料理を見ては、自分も迷いが生じていると認めざるを得なかった。

 結局何も言えずに食事を続ける。

 カルマンは何かを考えながらマスカートとムッカをちらりと見ていたが、口を挟む様子は全くなかった。それよりも食欲を満たすことの方が大事だった。

 バルジははなっから全く動じず、いつもと変わらない態度だった。

 その時、窓からコツコツという音が響き、皆、視線をそこに向ければ、モンモンシューが悲壮な顔をして中に入れてとアピールしていた。

「あっ、モンモンシューのことすっかり忘れてたわ」

 モンモンシューと目が合い、ジュジュは気にもかけずに放任していた事に罪悪感を感じてしまった。

 ジュジュが立ち上がろうとするが、その前にバルジがすでに腰を上げ、窓を開けていた。

 モンモンシューは素早く入り込み、そしてテーブルの料理の上を何度も飛び回っていた。

「このチビも腹が減ってるようだ」

 ムッカがお皿から何かを一つまみして、それを投げると、モンモンシューはそれに素早く食いつき、すぐさま咀嚼した。

「モンモンシュー!」

 ジュジュがはしたないとでも注意をするように名前を呼ぶ。

 モンモンシューははっとして、しゅんと首をうな垂れた。

「まあいいじゃないか。チビだって、腹が減るさ」

 ムッカはまた空中に一欠けらのパンを投げた。

 モンモンシューは再び機敏な動きで口に咥える。

 投げれば見事に食いつくので、それは観ていて気持ちよく楽しいものだった。

 マスカートとカルマンも面白半分に餌を与えだし、食卓の上でモンモンシューは踊らされているようだった。

 ジュジュだけが、それを楽しめず、小さくなってしまった姿が哀れに見えて仕方がない。

 本来ならもっと威厳を持って、誰からも恐れられる風格があるのに、これではいい玩具だった。

 責任は自分にあるだけ、モンモンシューを見ているのが辛くなってしまった。

 そんな様子を見ていたバルジは、自分の皿の肉をちぎり、そしてモンモンシューに見せるように腕を伸ばした。