カルマンがここへ来た時、偶然リーフがこれを手にしていたのを見てしまった。

 それ以来、この本が欲しくて、リーフの部屋に入る機会を狙っていたが、本人が居る時はもちろん入れず、留守のときもいつも厳重に鍵が掛けられ、バルジが完璧にこの部屋を守り、中々入るチャンスがなかった。

 今夜はその最大のチャンスの日だった。

 多少のアクシデントはあったとはいえ、そのお蔭でここまで辿り着けた。

「これが手に入れば、もうここには用はない。これで僕はこの世界を君臨してやる」

 その時騒がしくドタバタと足音が近づき、同時に自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

 どうやらすぐそこまでマスカートがやってきていた。

「くそっ、しまった」

 逃げ場を塞がれたら、一環の終わりだった。

 一か八かで窓から出ようかと思ったが、突然下から冷たい風が吹き上がるのを感じ、足元に目をやれば、地下へ続く扉が床にあった。

 床にめり込んでいた鉄の輪っかをつまみ出し、それを上に引っ張れば、扉が開いて階段が現われた。

 カルマンはすぐそこに飛び込んで、地下に入った。

 そこは通路になっていて、どこかと繋がっている様子だった。

 薄暗いが、壁伝いにまっすぐ進んで、破れかぶれになって逃げていた。