「リーフ」

 小声で名前を呟くジュジュの声は消え行く吐息のようだった。

 聞きたい事はあるのに、その後声が伴わず、その先は口がわなわなと恐れるように震えてしまう。

「どうした、何か私に言いたいことがあるんだろ」

 脅迫にも似た、強い威圧感。

 確かめたい事はあるが、身が竦んでしまい、その後は何も言えなくなる。

 目の前の人がずっと思い焦がれた人であるというのに。

「…… いえ、別に」

 やっとの思いで口をついて出た言葉は、自分でも虚しかった。

「でもジュジュが呼んでるってバルジから聞いたのだが」

「えっ、私が呼んだ? いえ、私は何も言ってません」

 突然の事にジュジュは戸惑い、リーフは怪訝に顔を歪ませた。

「しかし、私を見たとき、何か言いたそうだったが」

 ジュジュは心の中で葛藤する。

 この機会を利用して本人に確かめるべきか、否か。

 口許だけは、何かを伝えたそうに微かに動くのに、喉の奥で声を止めているそんな状態だった。

 リーフはそれを見逃さない。

 ジュジュが何を言おうとしているのか自分の耳で確かめたくなる。

「やはり何かをいいたそうにしてる」

 ジュジュは首を横に振り、リーフを避けるように井戸の側に置いてあった水桶に手を伸ばすと、リーフはいきなりその手を掴んだ。