時間の感覚もわからず、気がつけば暗くなりすでに夕飯の支度に取り掛からないといけなくなった。

 裏庭の井戸で水汲みをしながら、ジュジュは空を仰ぐ。

 セピア色の雲が薄っすらと赤く染まった空を流れていく。

 気の早い星がすでに顔を覗かせ、光りだしていた。

 それを見ていると、キラキラと光るイルミネーションを思い出し、セイボルの事を考えてしまう。

 外に出るたび、ついセイボルの姿が木の陰から現われないかつい見てしまう。

 水を汲んだ桶を持ち上げようとしたその時、長い髪が木の間から見えたような気がした。

「セイボル?」

 そっと名前を呼んでみた。

 そして近くまで足を向けたが、誰もそこには居なかった。

 前日に突き放してしまったことが気になり、それでセイボルはここには現われにくいのかもしれないとジュジュは思う。

 だが、また顔を合わせても、何を話していいのかわからない。

 リーフが自分の探している人だとわかったのに、すっきりできない感情を胸に詰まらせていた。

 なぜ苦しく思うのかすら、ジュジュはわかっていない。

 日が落ちて闇が森に広がるその様は、ジュジュの心の奥にも宿っていくように思われた。

 それ以上暗くなる森を見つめられなくなり、ジュジュは踵を返した。

 ふと顔を上げたその向こう。

 井戸の側に人のシルエットが薄暗い裏庭で浮かび上がっている。

 静かに立って、ジュジュを待っていた。

 ジュジュはゆっくりと近づく。

 そこに居る人物が誰か分かったとき、ジュジュの胸がドクンと大きく波打った。