セイボルがリーフのように振舞ってキスをしようとしてきた時、ジュジュは自分の迷いを見られているようでどうしても受け付けられなかった。

 セイボルが好きだとはっきり言えるが、その対となってしまったリーフの事もジュジュは好きだと言えてしまう。

 自分でも説明がつかないくらいに、同じ顔を交互に見てしまうと、どっちがどっちだかわからなくて、そんな答え方になってしまう。

 一時のただの気の迷いかもしれない。

 これが恋なのか、この状況にただ酔ってるだけなのか、本来の好きになった人を探すことを諦めたとたん、優柔不断に恋を楽しむだけに成り下がってるように思えてならない。

 何しにここに来たのだろうか。

 ジュジュは森の中に迷い込み、出口がわかっていても、ずっと混迷した状態を自ら続けているように思う。

 この状態に慣れ過ぎて、ずっとこのままでいたくて、先に進みたくない甘えがあった。

 現実が怖い。

 いつかはお城に戻らないといけない、自分に課せられた使命。

 まっすぐある道をわざと見ないで、横道にそれてそれを楽しんでいる。

 そこに恋もしたいと、乙女心にはしゃいで、夢見心地になっている。

 自由になったとたん、手に入れたものを全て失いたくない欲。

 セイボルとリーフの存在も、自分の中で位置づけて、二人と接触することを楽しんでいるようなものだった。

 モンモンシューがジュジュに向かってうるさく鳴いている。

 それは文句を言ってるように聞こえた。

「グゥー、ギャウー、モッキュ、ブォーン」

「わかってるって。そんなに怒らなくても」

 モンモンシューは首を横に振っていた。

 目を凝らして真剣にジュジュに向かって訴えても、モンモンシューが言いたい事はこの時ジュジュには伝わらなかった。

「クー、クー」

 最後は悲しくなって、落ち込んでいる。

「モンモンシューごめんね」

 ジュジュが抱きしめようとすると、モンモンシューはするりと抜けて、どこかへ飛んでってしまった。

 モンモンシューがジュジュに対して怒ったところなど見た事がない。

 余程腹に据えかねた様子だった。