ジュジュは心臓をドキドキとさせ、屋敷に戻ってきた。

 走ってきたことで息も荒く、咳が出てくる。

 新鮮な空気を吸いたいのに、上手く吸えずに苦しく喘ぐ。

 やがて咳は止まり、ようやく深く息も深く吸えるようになっても、胸につかえた苦しさは中々抜けてくれなかった。

 セイボルが嫌いで逃げたわけじゃない。

 寧ろセイボルの事は好きだといえる。

 恥かしがってジュジュに接する態度も、涼しい目元が優しくなって笑う笑顔も、子供じみて一生懸命になるところも、何よりジュジュを喜ばそうと常に自分の事を考えてくれるところも、心を満たしてくれて心地よい。

 その一方で、ジュジュは同じようにリーフも見ていた。

 人前に出ることを嫌い、冷たく突き放しては、事務的に振舞う態度。

 意地を張って悪ぶれているのに、それらは全て本心を見せないようにしている。

 どこかで何かを試すようにわざと振舞う裏で、ジュジュには優しさを覗かせる。

 セイボルと会えば、リーフを考え、リーフに会えばセイボルを考える。

 どうしても二人の事を同時に思ってしまう。

 同じ顔がジュジュの目に見えているものを混乱させる。