埃と蜘蛛の巣にまみれた、薄暗い地下。

 気温も一気に下がり、肌寒い。

 樽が積み重なってずらっと並び、お酒らしいものが貯蔵されていた。

 モンモンシューは珍しい光景に好き勝手にその辺りを飛んでいた。

 その奥の一角で、ぎょろりと何かに睨まれた気がして、視線を向ければ「ピキー」っと悲鳴を上げて驚いた。

 全ての毛が逆立ち、恐怖に慄いたモンモンシューはバルジの背後に隠れた。

「これは飾りだ。恐れる事はない。ただの守り神だ、この屋敷の、そしてこの森の…… だが、ジュジュには内緒だぞ。こんなの見たらきっと怖がる。いや、それよりもこれの本当の目的がわかったら幻滅するかもしれない」

 蜘蛛の巣が掛かった部分を手で払いのけ、バルジはやるせなく語った。

 その後、目当ての酒を手にして、階段を上って行く。

「チビ、行くぞ」

 バルジに呼ばれ、じっと見つめて観察をしていたモンモンシューは慌てて飛び立った。

 再び地下室の扉が閉まると、また暗く閉ざされ、その部屋は忘れ去られてしまうかのようだった。

 その奥には守り神と呼ばれるものが、出してもらえる日が来るまで表情を変えずにじっとしていた。