風の音と、女の子の泣き声が校舎の屋上で静に響く。

僕は、彼女の様子を息を殺して観察していた。

「…まさか、自殺なんてしないよな。」

屋上に泣きながら手すりに近づいて行く彼女を見て僕は、心の中で呟やいた。

シチュエーション的にはあまりにも、バッチリな状況なだけあって、何とも言えない緊張感と恐怖が僕の心を支配する。

一歩、一歩、手すりに歩いていく彼女の後ろ姿に、僕は固唾を飲む。

約1メートル程の高さの手すりの前まで彼女は来て、躊躇なく手すりを跨ぐと、体が落ちるか落ちないかと言ったギリギリの所で足を止めて
小刻みに体を震わしている。

彼女はスカートのポケットから徐に携帯を取り出すと、それを落とさないようにゆっくりとしゃがみこみ屋上の地面に置いた。

そしてもう一度立ち上がると、そのまま、僕の目の前から消えてしまった。

「……嘘だろ……。」

目の前で飛び降り自殺を見てしまった僕は何も出来ずに目の前の現実にただ、唖然とするだけだった。