知らなかった。


私はとても欲張りで、そして卑怯なのだと。


また彼に答えを委ねてしまう。




「なーに言ってんだよ」


やがて口を開いた真也の言葉は、拍子抜けするほど素っ頓狂で。


私は思わず目を瞬いてしまった。



「そういうこと言うなよ。お前は俺を信じてくれた。そうじゃなくても、俺がお前をここに置くって決めたんだ」


「ですが……」


言い淀む私に、真也は呆れた顔をする。


「あのさ、雛李。お前は俺に一体何を期待してるんだ?俺さぁ、雛李の求めてる言葉、言うつもりないからな」


「……え…?」



私の求めている言葉……?


自分のことですら分からない私の本心を、何故彼は理解できるのだろう。


困惑する私に、真也はまた優しい顔で笑う。



「お前の家の事情は知らないけどさ、巻き込みたくないって思ってるのは分かるよ」


静かに言われた言葉に、はっ、とその顔を見返す。