私自身に価値はない。


旧家のお飾りに過ぎない私は扱いやすい道具のようなもの。



それが、お祖母様の称する“お人形”の所以だ。


私はそれに従って生きるのみ。


それ以上でもそれ以下でもない。



そんな私に手を差し伸べて、何も裏が無いわけがない。


それならば、私は……


この人を信用するべきではない……?



『また裏切られるの?
もう、利用されたくない。傷付きたくないよ』


不意にそんな声が頭を()ぎり、こちらに向かってくる手が何か恐ろしいもののように思えた。


そして。


パシン、とその手を払いのけてしまった。



自分のしたことに気付いたのは、そのすぐ後で。


「あ……申し訳、ございません…」



謝っても、何かが変わるわけでも、やってしまったことが取り消されるわけでもない。