鍵を取り出し、ドアを開ける。
静まり返ったアパートの中にわたる達の行動が響き渡った。
蛍光灯の灯りが、その様子を照らす。
「ほら、水」
玄関で座り込んでいるわたるに、山本はコップに入った水を手渡した。
相変わらず面倒見がいい。
「ありがと……」
「ベッドのシーツ変えてくるから、待ってて」
「山本はどこで寝るの?」
「寝袋」
「寝袋?なんで?」
「一緒に寝る訳いかないだろ」
そう言って山本は、クローゼットの中から寝袋を取り出す。
「うち、そっちがいい」
寝袋を指さし、わたるは言った。
「やめろ。頼むからベッドで寝てくれ」
「ケチ」
「はいはい。分かったから、早く水飲んで、靴を脱いで」
リビングの方へ寝袋を持っていき、ワンルームの部屋の片隅にそれを置くと、山本はベッドのシーツを取り変え始める。
わたるは水を飲み干した後、靴を片方脱ぎ、玄関に寝そべった。
そこから見える山本の姿を見て、改めて良い奴だと実感させられる。
大事にしてくれていたのに、その気持ちに胡坐をかいて、傷つけた。
「何やってんだよ」
洗濯機の中にシーツを入れた後、山本は怪訝な表情でわたるを見降ろす。
「寝そう」
「ここで寝るな。ほら靴脱げ」
「脱がして」
「甘えるな」
「脱げない」
「ったく、仕方ないな」
溜息をついて、わたるの靴を脱がした。
「起こして」
「はいはい」
起こされ、ベッドまで引きずられる。
ベッドの前まで来た後手を解放された。
「後は自分で行けるだろ」
「はーい」
ベッドの上によじ登って、寝転がる。
一瞬にして意識が飛んだ。