表面的な関係が元に戻ってから数日後。
再び仲間内で飲み会が開催された。
仲間内の数人が給料日後ということで、場所は居酒屋。山本は欠席だ。
「最近、野田さん元気なくない?どうしたの?」
牧野紗枝が、既に三杯目のジントニックを手に持って言う。
「いや。別に元気だけど」
「山本となんかあったの?こういう席に来ない山本とか珍しくない?」
「確かに、珍しい」
原因が自分であるというのは、少しおこがましいかもしれないので、わたるは同調した。
「なんか紗枝、ちょっと罪悪感なんだよね。この間酔った勢いでお節介しちゃったし」
「そうだね。今のこの状況もこの前と同じパターンだってことを自覚しようか」
「本当野田さん面白いよね」
「はあ……そんなことないと思うけど」
ケラケラと楽しそうに笑う紗枝に、わたるは力なく笑う。
お酒の力借りるとそんなに解放出来るのかというくらい紗枝は楽しそうに見えた。
「はあ、おもしろかったー」
「牧野さん」
「ん?どうしたの?紗枝になんか相談?」
「ジントニック私も飲みたい」
「えー、いいよ。じゃあ紗枝頼んであげる」
テーブルの上に設置されている店員呼び出しボタンを押して、紗枝はわたるの分のジントニックと自分の分の日本酒を頼む。
数分後。
店員が持ってきたジントニックをわたるは飲み干した。
「うわー、いい飲みっぷりじゃん。野田。こっちにビールも残ってるぞ」
仲間の一人がわたるの方を見て言う。
「そっちのビールも頂戴」
「うぇーい!」
「ありがと」
「一気コール行きますか」
「うぇーい」
酔ったテンションの仲間達から、わたるに向かってコールがかかる。
イッキ、イッキ、イッキ、イッキ。
一気に渡されたジョッキを飲み干すと、ここ数日山本の事を考えていた思考が薄れてきた。
そして除々に意識が朦朧とし始める。
「え、ちょっと野田さん大丈夫?」
薄れる思考の外から紗枝の心配そうな声が聞こえた。