話終えると。
食事を終えた面々が顔をそらしている。
「え?何で?いい話じゃない?ねえ、わたる」
「なんていうか……席隣に座ったりとか、色々ツッコミを言いたいことあるんだけど、とりあえず、エロイ」
「うん、エロイ。マイケル」
「マイケルじゃねーよ、篠村。オースティンだから!えー!いい話じゃん。小説に直したら絶対直木賞とか取れちゃうって!真弓とオースティンの間って題名でさ!」
「お前とその人の間に誰いるんだよ。怖いよ」
わたるが口を押さえ笑いながら、真弓に言った。
「愛だよ」
真弓も流石にそのタイトルはなかったと思っているのか、笑いながら答える。
「センスなさすぎだろ。なあ、景子」
「野田に同意。でもさ、書籍化したら篠村表紙描けよ」
「マイケルの?」
「マイケルじゃないって、オースティン!」
景子も佑香も笑っていた。
「ってか真弓遊ばれてない?大丈夫?」
景子はひとしきり笑った後、真弓に言った。
「大丈夫だよ。部屋にも私の写真飾ってくれてるし、帰国も一年後らしいし。この間、友達にも紹介してくれたし」
「そうなんか……まあ、真弓がいいならいいけど」
レストランのスタッフが食べ終えた肉料理の皿を片づけ、一旦テーブルの上は何もなくなる。
「そろそろ甘いの欲しくなってきた」
満たされた腹と共に、話題の内容も過激な話より甘い物が欲しい。
「じゃあ、トリはわたるだね。彼氏のコースケくんとの慣れ染め教えてよ」
「ノダーマンの彼氏の名前コースケって言うの?」
佑香が尋ねた。
わたるの彼氏のはずなのにも関わらず、真弓が「そうそう」と答える。
「一年ぐらい付き合ってるよね?」
「もう真弓が言っちゃえよ」
めんどくさそうな表情で、わたるが真弓に言った。どうやら自分の恋愛を人に言うのは恥ずかしいらしい。
「だめ、わたるが自分で言わないと」
「うちも野田の恋愛聞きたい!」
と景子。
「うちもノダーマンの話聞きたい」
と佑香。
「「聞きたい」」
「……えー、なんか、期待されると言いたくなくなる……」
「自分だけ聞いて言わないとか、最悪だよ。野田」
「そうだぞ、リア充マスターワタル!」
景子に乗じて真弓もふざけた調子で応戦する。
「ポケモンみたいに言うな!」
「ほら早くしないとデザート来ちゃうよ」
真弓がせかしていると、柏木が優雅な動作でデザートを持ってくる。
チョコレートのプリンとカラメルソースの掛ったナチュラルなプリンの上に、ホイップクリームとフルーツがふんだんに乗っかっている。
こちらのプリンは鳥骨鶏の卵を使ったものになっております。
こちらのメロンは北海道の夕張メロンになりまして、こちらのパイナップルは沖縄産のもになります。
どうぞ最後までごゆるりと堪能下さいませ。
「うわ、やばーい!」
「可愛い!写メっていい?」
「真弓。うちにも画像送って。充電切れちゃった」
「いいよ」
彼女達の話題が目の前に運ばれてきたデザートに変更した事によって、わたるは安堵し、自分もスマートフォンについているカメラを起動して写真を撮った。
「早く話してよ」
話題が一瞬逸れたからといって、彼女達がその話題を忘れているはずもなく、再び景子にせかされる。
「うう……分かったよ」
とうとう観念して、わたるは自分の話を始めた。