「キミハボクノガールフレンドナルカ?」


「なりたい。I want to be your girlfriend.(私はあなたの彼女になりたい)」


 今度は間髪いれず答える。オースティンは笑って「Come here my girlfriend.(おいで僕の彼女)」と真弓を抱きしめた。


部屋の中で吐息が混ざる。


薄暗い四畳半の部屋の中で、スタンドランプだけが妖艶に肌を照らす道具となっていた。


身体の奥から沸き上がる熱が、優しく触れる手を愛おしく感じる。


首筋を伝っていた唇が胸の辺りまで降りた時、真弓は掴んでいた枕を開放して目の前にいる男の背中に手を回した。


それが合図かのように行為は激しさを増していき、まるで肉食動物のような獰猛さに逃げ場のないベッドの上で身をよじらせる。


しかし、あっという間に行く手を阻まれてしまった。

大きな手で顎を優しく包まれ、唇が重なる。


本日何度目か分からないそれに、慣れたと言えば嘘な訳で、そこから先は夢中になりすぎて真弓の記憶はおぼろ気だ。



「How are you ?(気分はどう?)」


「I’m fine.(大丈夫)」


心配そうな表情で顔を覗き込むオースティンに、先程までの荒々しさは見受けられない。


ぐったりとした表情で笑う真弓の両腕を引っ張り、オースティンは彼女の身体を起こさせる。


「Come on Mayumi.(おいで、真弓)」


ベッドから起き上がって連れて行かれたのは、シャワールームだった。


人がやっと二人入れるくらいのシャワールームで再びキスを繰り返す。


目の前の男と自分の交わる吐息と、シャワーから流れ落ちるお湯の音以外聞こえない。


「このシャンプー、私も使ってる」


流し台の上に置かれたシャンプーを指さして真弓は言う。


「My favorite.(お気に入りなんだ)」


「Really?(本当?)」


「Yeah,イマカラキニイッタ」


「あはは」


 笑っていると、お腹が鳴る。


先程アップルパイを食べたはずなのにと今度はオースティンが笑った。


「Let’s go shopping to super market later. My freeze is empty.(後でスーパーに買い物に行こう。冷蔵庫空なんだ)」


頷き、再びキスを繰り返す。激しい行為の後で、スーパーマーケットまで買い物に行ける体力が残っているかどうか心配だったが、真弓は頷いた。