それから数時間。


店を出た後、二人は表参道に並ぶ店を長めながら歩いていく。


繋がれた手に緊張感はもうない。


「ねえ、オースティン」


「ナンダ?」


「Why did you think you want to go out with me ?(何で私と一緒に出かけたいって思ったの?)」


 
真弓の質問にオースティンは沈黙した。


そして立ち止まる。


何か考えている様子の彼に、真弓は何の気なしに尋ねてしまった事を後悔した。


「……」


「……」


沈黙の後オースティンは繋がっていた手を開放する。


そして言葉を紡いだ。


「キミノコトガスキダカラ、モットシリタイトオモッタ。マユミハ?ドウオモッタカ?」


「えっと……」


オースティンの言葉の意味を考えつつ、言葉を考える。


一体どういうつもりで、言ったのだろう。


「……」


目が合う。


真剣な表情なのは分かった。


正直に答えていいのだろうか。


好きと答えて、この異国の男との関係は変化するのだろうか。


頭の中で色々な事が浮かんでは消えていく。


「Me too.(私もだよ)」


思考回路とは反対に答えは自然に口から溢れていた。


再び手が繋がれる。


再び緊張感が生まれた。


目の前にいる男は迷っているように見える。


しばらくの沈黙の後、オースティンは日本語でこう言った。