横浜駅はまるで迷路だ。
東口と西口の方向はプレートに表示されている文字で分かったが、東口は一体どこまでが東口とカテゴライズされているのだろう。
外まで出たところで、そこは東口ではないことに気がつく。
薄暗くなった空に別れを告げて、真弓はエスカレーターを戻っていった。
しばらく地下通路を歩き、改札前のルミネの前を右往左往する。
まるで田舎娘だ。
東京の渋谷、新宿だったら絶対こんなことにはならないのに県が異なるだけで同じ日本なのにまるで分からない。
何か悔しい。
約束の時間になった。
ダメだ。迷子確定。
情けない気持ちになったところで、ポケットの中のスマートフォンが電話の着信を告げる。
「はい……」
「Hi. Mayumi. Where are you doing now?(やあ、今どこにいる?)」
「うう……オースティン。アイム ロスト……(私、迷子)」
「ダイジョウブカ?」
「ここ、どこ?」
「ナニガミエルカ?」
「ルミネ」
「……ルミネ」
「と改札」
「Ok, I’m coming soon.(分かった。今すぐ行くよ)」
通話が切れる。
「え、ちょっと。待って」
ツーツーと機械音が耳に届き、不安が倍増した。
ルミネの前を人々が忙しなく行き交っている。
電話が切れてから五分。
来ない。
まさか、ここに来て放置なんてことは……。