それから毎日、他愛のない英語の短文ラリーが続いた。
今日はどんな一日だったのか、勉強は何をしているのか。
家族は何人?
好きな食べ物は?
好きな映画は?
英語か日本語かの違いだけで、同じ人間なのだと実感していく。
共通の話題が見つかると、それだけで嬉しい。
「きょう、べんきょうした。かんじ、牛、鳥かけた」
珍しく日本語でメールが来た。
「すごい!でも、豚は?」
「そのかんじわからない。なにだ?」
「pig(豚だよ)」
「Oh ok. I got it. (ああ、分かった)」
フォルダの中に溜まったメールを読み返しながら、吹き出してしまう。
部屋の中でパックをしながら、明日に控えたデートの事を考えた。
横浜ってどこ行くんだろう。
中華街、桜木町、みなとみらい。
スマートフォンをネット接続させ、横浜と調べてみる。
グーグル検索で画像を表示させると、有名な観光名所がいくつも並んでいた。
浮かれている自分がいる。
こんな自分初めてだ。
少しばかり怖くなる。
「……大丈夫だよね」
緊張した面持ちでベッドの中に入るが、落ち着かない。
「……」
スマートフォンを開き、受信BOXを見る。
最終受信、午後二十一時。
「I’m looking forward to see u tomorrow.(明日会えるの楽しみにしてるよ)」
ドタキャンはなさそうだ。
大丈夫。寝よう。
逸る心を抑え、真弓は無理矢理瞳を閉じた。