授業が終了し、真弓は電話帳の中から友人の名前を探し出す。
迷った時は相談だ。
縋るような思い出コール音を聞く。
「……はい?」
七度目のコールで相手は出た。
通っていた女子校が同じで、中学一年生から高校三年まで殆ど毎日一緒に通った友人、わたるは寝ぼけたような声色で欠伸をしながら返事をする。
「わたる……」
「どうした?」
「なんかさー。今平気?」
「あー、うん。どした?」
「何か、昨日外国人のいるパーティー行ってきたの」
「へー、楽しそうじゃん」
めんどくさがりの友人のテンションが少し上がった。
面白がっている。
「でね」
「モテた?」
「いやー、それはもう。じゃなくて」
「なんだよ」
「カッコイイ外国人と一緒にしゃべった。アメリカ人だって」
「よかったじゃんか。誰に似てる?」
「オーランドとゴシッブガールのネイトを足して、ちょっと一般人にした感じ」
「全然分かんねえ。特に最後」
寝起きのまま、真顔でツッコミを入れる友人の顔が容易に想像出来た。
笑い出しそうになるが、ここで脱線してしまえば、話の流れが終わってしまう。
「とりあえず、イケメンなの」
咳払いを一つして、真弓は言った。
長年共に成長してきた友人とは、どんな話をしても盛り上がってしまう。
「そりゃ、よかったじゃん。で、そのイケメンがどうしたの?」
「連絡するって言って連絡来ない」
「寝てんじゃねーの?」
また始まったよ。
と言わんばかりの口調でわたるは言った。