スタッフがサービスドリンクを運んできたので、四人はそれを受け取り乾杯する。


「かんぱーい」

「かんぱーい」


猛暑の中、乾ききった身体に冷たいアルコールがしみわたる。

ベリーニと呼ばれるそのアルコールは、ほんのり桃の香りがした。


「やばいねー」

「そうだね、うちらやばいねー」


 佑香と真弓が顔を見合わせ、もう一度乾杯をした。カチンとグラスが鳴り、中に入っているベリーニの炭酸水の泡が上へと昇りはじけた。


「ちょっと、大人げないから何度も乾杯すんな」


 わたるに注意され、佑香と真弓は顔を見合わせ「だって楽しいんだもん」「だもん」と口を揃えた。


「本当だよ、篠村も真弓も落ちつけよー」 


 笑いながら、景子が言い、言葉を続ける。


「ねえねえ、普通に会話するんじゃ面白くないからさ。料理食べながら恋バナしようよ」

「え、何話すの?」

佑香が少し嫌そうな顔をして言った。

彼女は普段から恋愛だけでなく自分の話をしたがらない。


景子や真弓は用もなく、よく電話してそういった話をしているのだが。


「だって、うちらみんなで集まると、いつもくだらない話しかしないじゃん。悩み相談とかさ」


「確かに」


 景子言葉にわたるが同意する。

自分は話さないが、人の話を聞きたいのがわたるだ。

こうやっていつも面白い事には便乗し、自分の番になると急にだんまりになるのもわたるであるが。


「だからたまには、みんなで集まっている時に恋の話しようよ。もう今年で二十二の大人の女になってきてるんだし。高級料理に合わせて自分の一番の恋の話をしてくって事で決定でいいかな?」


「うちさんせーい!」


 真弓がグラスを上げて、言った。


「まあ、面白そうだけど……聞く分には」


「野田も言うんだよ」


 景子がわたるに少しばかり強い口調で言う。


昔からこのメンバーの中で景子が一番発言権が強い。


そこに、店のスタッフがコース料理の前菜を彼女達の前に運んできた。

色とりどりの野菜にその店自慢の特製ソースがかかり、綺麗に輝いている。


こちらは、山形県の農家から直送で仕入れている新鮮な野菜を使用しております。

お好みでこちらのペッパーもかけてお召し上がりください。


 マニュアルを読むような口調でスタッフが言い去って行った後、真弓は景子に言った。


「じゃあ、トップバッターは言いだしっぺの景子から」