「自転車なんですけど……」


「俺も自転車なんで、嫌じゃなかったら」


「嫌じゃないですよ」


「よかった」


人懐っこい顔を浮かべ、大月は佑香と肩を並べて歩き始める。


向かい合って話している時にはあまり意識しなかったが、隣り合ってみると自身の女の身体とは違う事に気がついた。


同じようなパーカーを来ているのにも関わらず、肩幅が全く違う。


「秋ですね」


無駄に緊張したのを隠すように、佑香は何でもない話題を大月に振った。


「確かに。これで焼き芋のおっさんの声が聞こえてきたら、確実に秋が来たって感じする」


「わかります。さっき同じこと考えてました」


「なんか、俺達って気が合う?」


疑問形で尋ねられ、笑う。


「そうですね、観てるアニメも一緒ですし」


「一緒に怒られたしね」


「そうですね」


「篠村さん、さっきからそうですねしか言ってない」


「そんなことないですよ。なんか居心地が……学校に男の子いない訳じゃないんですけど……ああ、何言ってんだろう」


「もしかして女子校育ち?」


「そうです。なんか、大学に入って急に男の子と接すると緊張しちゃうっていうか」


「そこまで一緒なのか!俺も男子校出身」


「男子校ってどんな感じなんですか?」


「うーん。一言で言うと……汚い」


「汚い?」


「汚いって言い方は変かな。汗臭いって言う方が正しいかも。クーラーなくてさ。酷い奴なんかパンツ一丁で授業受けてんだぜ。女子校ってどんな感じなの?やっぱごきげんようとか言う感じ?」


「ごきげんようは、なかったかな。みんな元気ですよ」


「授業中とかもうるさいの?」


「ああ、うるさいですね。喋ってばっかりですよ。先生とかもよく怒ってたし」


「じゃあ、そういうとこは男子校も女子校も変わらないんだな」


自転車置き場に到着し、それぞれの自転車を持ちよりもう一度集合する。


「あ、自転車まで一緒」


先に気がついたのは、佑香だった。互いに顔を見合わせ笑う。


先ほど感じた緊張はいつの間にか消え去っていた。


「本当気が合うね。この自転車あそこの角曲がったところで買ったんだけど」


「私もです」


「この形が一番身体にフィットしたんだよね」


「私は色がカラフルで気に入ったから」


「確かにこれが一番個性的な自転車だったかも」


「ですよね」


「……」


「……」


会話が途切れる。ここから自転車に乗ってしまい解散となるのか、もう少し話を続けるのか。


「自転車押して帰る?」


大月の提案に佑香は


「そうでうすね」



と頷いた。