その時
ルオンの碧色の瞳がパァッ!と輝いた。
ブワッ!!と辺りを激しい風が吹き抜ける。
とっさに目をつぶり、腕で顔を覆った。
な…何が起こったの……?
風がやみ、恐る恐る目を開けると
そこには、もう二人の姿はなかった。
今のは…“瞬間移動魔法”…?
動揺して、私はその場に立ちすくんだ。
…まるで、夢を見てるみたいだった。
一瞬の夢…。
レイに似た、ギルのような少年と出会うなんて………
“…きっとまた、すぐに会えるよ。”
頭の中に響く言葉は、ルオンの存在が夢ではなかったことを実感させる。
……ルオンは、魔法使い?
少年の姿とは裏腹に、肌で感じた魔力は
そこら辺の魔法使いより大きかったような気がする。
私は、彼らの消えた廊下を眺めながら、手のひらを、きゅ…、と握りしめた。
と、その時だった。
「……嬢ちゃん!こんなトコにいたのか。」
コツコツ、と階段を上ってくる音が聞こえ、声のする方へ視線を向けると
眉を寄せながらも、ほっ、としたような顔をしたロディが見えた。
…!
私、“待ってろ”って言われてたんだった…!
私は、らせん階段を上りきり
こちらへ歩いてくるロディに向かって頭を下げた。
「ごめんなさい…!勝手にウロウロして…。
ギルと同じ髪の色をした人を見かけたから、偽ギルかと思って追いかけちゃったの。」
すると、私の言葉を聞いたロディは
ぴくり、と眉を動かして私に尋ねる。
「“ギルと同じ髪の色をした人”?
嬢ちゃん、偽ギルに会ったのか?」
「ううん、結局、人違いだったの。」
…私よりも年下だったし。
するとロディは、ふぅ…、と息を吐いて私に言った。
「度胸と行動力があるのは嬢ちゃんのいいところだが、もう勝手に走り回るんじゃねぇぞ。
もし何かあっても、今日はここにギルが入って来れないんだから。」
…!
私は、はっ!として目を見開く。
そっか。
闇の魔力の持ち主を排除する電磁波で囲まれたこの会場に、ギルは入って来れないんだ。
…“本物のギル”がいるわけないよね。
その時
私の頭の中にルオンの顔が浮かぶ。
ルオンは魔法を使っていたけど…
“闇の魔法”を使わない、“光”だったからパーティに参加できたのかな?
…シルバーナさんの“警備装置”はすごいな!
同じ魔法使いでも、闇だけを区別することが出来るんだ?
私は、ロディに向かって尋ねる。
「ロディは、偽ギルに会えたの?」
すると、ロディは眉を寄せ低い声で言った。
「いや、喫煙所にも、バルコニーにもいなかったんだ。
本当にここに居るのかさえ怪しいが、シルバーナさんが受付をしたと言うからな…。」