!
私は彼の問いかけに、はっ!として答える。
「私は、ルミナ。
…えっと…ルオン君は……」
私が彼の名前を呼ぶと
彼は、ふふ、と笑って私に言った。
「呼び捨てでいいよ。
…ルミナは、どこかの財閥の娘?」
ルオンの言葉に、私は、ぶんぶんと首を横に振る。
「私はシルバーナさんの知り合いで、お嬢様とか、そんなんじゃないの。
ルオンは、どこかの御曹司なの…?」
御曹司にしては、ラフな格好だけど…。
私の考えを察したのか、ルオンは笑いながら答える。
「僕は御曹司とかじゃないよ。
…堅苦しいスーツは苦手でさ。ちょっと様子を見に来ただけだし。」
へぇ……
ルオンは、ここの関係者の人なのかな?
それか、招待客の付き添いとか…?
ルオンは、私の方へ視線を向けて尋ねた。
「ルミナ、バイキングは食べた?
料理もお酒もこの家のお嬢様が選んだ高級品らしいよ。」
私はルオンの方を、ぱっ!と見て答える。
「うん、とっても美味しかったよ。
お酒は、あと三年しないと飲めないから口にしてないけど…。」
するとルオンが、はっ、として私を見た。
「“三年”…?ということは、僕より一つ年上なんだね。
ごめん、敬語とか使ってなかった。」
「!全然気にしなくていいよ。
一つ違いなんて、同い年みたいなものだし」
私がそう言うと、ルオンは安心したように呼吸をして
らせん階段の手すりに体を寄りかからせた。
…それにしても、見れば見るほど“レイに似ている”。
もし、ルオンが銀髪だったら、完全に小さいレイだ。
…穏やかな口調は全く違うけど…。
するとその時。
低く、感情のないような声が聞こえた。
「ルオン様。」
!
ばっ!と声する方を振り向くと、メガネに黒のタキシード姿の男性が私たちの背後に立っていた。
び…びっくりした。
…近づいて来たことに、全然気がつかなかった。
私が驚いて男性を見つめていると、ルオンが手すりから離れて口を開いた。
「ラルフ。
…もう準備は終わったの?」
「はい。…そろそろ帰りましょう。」
どこか、先ほどとは違うルオンの声。
ルオンに敬語を使う、“ラルフ”と呼ばれたメガネの男性は、私をちらり、と見た。
どくん…!
なぜか、心臓が鈍く音を立てた。
まるで、体を一瞬で貫かれたような鋭い視線。
何も言えずに身構えていると、ルオンが私に向かって言った。
「じゃあルミナ、名残惜しいけどお別れだ。
パーティは、これからが本番みたいだから、楽しんでね。」
え…?
ルオンの言葉に目を見開くと
ルオンは仮面のような笑みを浮かべて呟いた。
「…きっとまた、すぐに会えるよ。」
…!