ドンッ!!




「きゃ……!」




曲がった先で、勢いよく人にぶつかる。

衝突した反動で、体が後ろに跳ね返った。


…倒れる…っ!



と、次の瞬間

私の体を、ぐっ!と力強い腕が支える。




「っ?!」




私は、その腕に引き寄せられるままに

私とぶつかった人の胸へと飛び込んだ。



ぽすん、と体を預けると

視界に、サラサラの黄金の髪の毛が見えた。



…!



驚いて目を見開くと、頭上から優しげな声が聞こえる。



「……大丈夫?」



「!」



ぱっ、と顔を上げると

綺麗な碧眼と目が合った。



透き通る宝石のようなその輝きに、私は目を奪われる。



…レイと……同じ瞳の色…?



すると、碧色の瞳の彼は優しく微笑んで
口を開いた。



「…僕を追いかけて来たでしょ?

怪しい人かと思って、待ち伏せしてたんだ。…ごめんね、痛かった?」






私は抱きとめられている腕から、ぱっ!と離れて、彼に答える。



「ご、ごめんなさい…!

怪しい人じゃないの!…あなたが、私の探している人によく似ていて……」



そう言いながら、私は彼をじっ、と見つめた。


改めて見てみると、彼は、写真の偽ギルとは全く違う。



背は私より少し高いくらいで、体つきもそこまでたくましくはない。

“青年”、というより“少年”だ。



一瞬、女の子と間違えてしまうほど、整った顔をしている。



髪の毛は、ギルのような黄金の色。

でも、瞳はレイのような碧色だ。



顔つきも、どこかレイに似ているような…?



すると、私の視線に気づいた彼が

柔らかい表情のまま口を開いた。



「探してる人じゃなくて、ごめんね。

…でも、こんな綺麗な人から追いかけられるなんて、ちょっと嬉しいな。」



「えっ…!」



不意打ちの言葉に、私は少し頬が赤く染まる。



…こ…この人

見た目はレイに似てるけど、口調はギルそっくり。



…不思議な人だな…。



すると、彼は少し首を傾げて私に尋ねた。



「…何?僕の顔、気になる?

そんなに、じっと見られると緊張するんだけど。」






私は、慌てて彼に答える。




「あ、えっと…。

実は、私の知っている人に似ている気がして……」



「“知っている人”?」



私は、少し躊躇しながら言葉を続けた。



「いつも私を助けてくれる、優しくて紳士的な人がいて

あなたと同じ髪の色をした男の人なんだけど…。」



「…あぁ……。“そっち”か…。」



え?


私が、彼の言葉に小さく目を見開くと

彼は、はぐらかすように、ふっ、と笑って
私に言った。



「……僕の名前は、“ルオン”。

君の名前は、なんて言うの?」