「…喫煙所か……。」



ロディは、ぼそ、と呟いて、手に持っていた皿をテーブルに置いた。



そして、私を見て口を開く。



「嬢ちゃん、悪いが、ちょっと辺りを見てくる。

…一人にするのは心配だが、喫煙所のタバコは体に毒だからな。少しの間、ここで待っていてくれるか?」



私はロディに向かって、こくん、と頷いた。



「私は大丈夫、心配しないで。

気をつけて行ってきてね…!」



「あぁ、大人しく待っててな。」



ロディは、シルバーナさんに案内されながら私から遠ざかっていく。



ふぅ…、と呼吸をすると

急に周りの音が大きく聞こえるようになった気がした。



…最近は、いつも私の隣にレイかロディが居てくれたから

“一人”になるなんて、久しぶりだな…。



また、一人でいる時にダウトに襲われたら、今度こそどうなるかわからない。



だけど、ここには“闇が入って来れない”から一人で居ても安心だ。



…ロディを待ってる間に、酒場に持って帰る料理を取っておこうかな。



私が、バイキングのトングを手に取ろうとした

その時だった。



「……?」



私の視線の先に、パーティ会場にいるにしては、ラフな格好をしている青年が見えた。



カーキ色のモッズコート。

ポケットに両手を入れて歩いている。



会場の二階へ続く、らせん階段を登るその背中に、なぜだか目が奪われた。



窓から差し込む月明かりに照らされた髪は

見覚えのある黄金の色………。



…!



もしかして……

“偽ギル”……?



私は、とっさに駆け出した。



まさか、ロディとは反対方向にいるなんて…!



階段の先へと消えてしまった青年を必死で追いかける。


私は、らせん階段を上りながら

ぐるぐると頭の中で考えた。




あの人は、“偽ギル”なのかな…?

確か、シルバーナさんに見せてもらった写真の男性は、もう少し太って短髪だったような……




でも、黄金の髪の青年なんて、あまりいないはず…。




じゃあ、今、私が追いかけてる人は

………“本物の”………?




階段を駆け上がり、廊下の曲がり角を曲がった

その時だった。