ロディは、深くは語らずハンドルを切って、屋敷近くの駐車場に車を停めた。



車を降りた私たちを、ひんやりとした空気が包む。



門へと歩くまで、だんだんと眉間にシワが寄るレイを私はハラハラしながら見つめていた。



…偽ギルは、本当にここに来ているのかな?

喧嘩にならなきゃいいけど…。



すると、その時

薄いグリーンのドレスを身につけたシルバーナさんの姿が見えた。



門の前で私たちに小さく手を振っている。



「皆さん、よく来てくださいましたわ。

…ルミナさんも、お綺麗ですわね。」




っ!



にこり、と微笑むシルバーナさんに、私は小さく頭をさげる。



「招待していただいて、ありがとうございます。

あの……」



偽ギルのことを聞こうとした時

レイが私の言葉を代弁するかのようにシルバーナさんへと詰め寄った。



「おい、“彼氏”は、ちゃんとここに来てるんだろうな…?」



ギロリ、と鋭い視線を向けるレイに、シルバーナさんは慌てて答えた。



「えぇ、受付を通ったので、屋敷の中にいると思いますわ。」






それを聞いて、隣に立つレイのまとうオーラがどす黒くなったような気がした。



ロディは、そんなレイを面白がるかのように見つめている。



シルバーナさんは、私たちの招待状を確認すると、にこやかな笑みで歩き出した。



「さぁ。皆さんも、どうぞ屋敷の中に。」



その言葉に、私は、緊張と期待が混ざったような気持ちで足を踏み出した。



シルバーナさんの後に続きながら、目の前にそびえ立つお屋敷を見上げる。



…それにしても大きいな…。

ここに住んでいるんだよね…?



前を歩くレイは、迷いなく門に向かって歩いていく。



…これは、喧嘩する気満々だな…。

私はロディと静かに食事を楽しもう。



その時、レイがちら、と後ろを振り向いて、私の後ろを歩くロディに声をかけた。



「おい、ロディ。屋敷に入る前に、そのダダ漏れの色気をどっかに捨ててこいよ。

お前がタバコ片手に酒飲んでるだけで、視線が集まってしょうがねぇだろうからな。」





…た、確かに……。


ロディと静かに食事…どころじゃないかも。



ロディは、さほど関心がないようにさらり、と答える。




「バカ言え。色気なんてないし、振りまいているつもりもない。

…もしあるとしても、捨てられないな。情報収集の時にでも使う。」



っ!

…恐ろしいセリフだ。


ロディは言葉巧みに、どんな人からだって情報を盗むだろう。