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「き…緊張する…。」



ついにやってきたパーティの日。

現在、時刻は午後七時。



約束の時間まで一時間。



私は、レイから貰った(?)ドレスに腕を通し、鏡とにらめっこをしていた。



酒場によく来る近所のお姉さんに、メイクと髪型をセットしてもらって何とか時間には間に合ったけど…。



…これでいいのかな…?



メイクをした自分の顔が見慣れないせいか、どこか落ち着かない。



その時、コンコン、と離れの部屋の扉を叩く音がした。



「嬢ちゃん、そろそろ出る時間だ。

準備は出来てるか?」





扉の向こうから聞こえるロディの声に、私は慌ててカバンを持つ。



急いで扉を開けて外へ出ると、黒いスーツを着たロディと目が合った。



…っ!



つい、その姿に見惚れる。



さ…さすが“黒き狼”。

スーツも、シャツも黒だよね。



すると、ロディが、ふっ、と笑って低く艶のある声で私に言った。



「…綺麗だな。

何だか、いつもの嬢ちゃんじゃないみたいだ。」



っ!

かっ!と、体が熱くなる。


…さらっ、とそういう事言うんだから…!


私は緊張しながらロディに答える。



「あ、ありがとう。なんか、ロディもいつもと雰囲気違うね。

…大人っぽいっていうか…。」



「そりゃ、大人だからな。

コートで行くわけにはいかないだろ?」



ロディは、私の反応にクスクス、と笑った。



…その仕草までかっこいい。



本当に、ここまでスーツを着こなせる人なんているんだろうかってレベル。



私が、ロディを見つめていると

彼の持つカバンから、黒いパソコンが覗いているのが見えた。



「ロディ、会場にパソコンも持っていくの?」



すると、ロディはニヤリ、と笑って低く答えた。



「コイツは俺の相棒だからな。タバコとパソコンは常に持ち歩いてんだ。

…まぁ、金持ちの社交パーティは情報収集に持ってこいだし。」



“情報収集”…?!



…ロディは、一番パーティに招いてはいけない人物だったと思う。



彼の言葉に、ロディの“情報屋としての裏の顔”を垣間見てしまった私は

少し緊張しながら、ロディの後に続いて酒場を出た。



酒場の前には、ロディの愛車が停めてある。


…やっぱり目立つな。

真っ赤な外車…。


この前はこれにギルと三人で乗って、森の中を走ったんだよね。



するとその時

ガチャ、と後部座席のドアが開いて、すでに車に乗っていたレイが口を開いた。




「ぼさっ、としてねーで、早く乗れ。

時間に遅れるぞ。」