私は、そわそわしながらカウンターに入っていった二人を見る。



するとレイがしびれを切らしたように、ばっ!とシルバーナさんの方を向いて

その場を凍りつかせる言葉を言い放った。



「おい、落ち着いて聞け。悪いが、あんたの彼氏はとんだ嘘つき野郎だ。

本物のギルでもなければ、偽物を名乗る資格もない。」



っ!

れ…レイ…!


私の顔が、さっ!と青ざめると同時に、
レイは一呼吸おいて続けた。



「忠告する、そんな男とはさっさと別れな。

ついでに、俺をそいつに会わせろ。…二度とギルの名を語るなと言ってやる…!」



私は、呆然として言葉を失うシルバーナさんの横で、「レイ、失礼だよ…っ!」と慌てて言った。


しかし、レイは悪びれもせずに、眉間にシワを寄せたまま怒ったような顔をしている。



その時、ロディが再び小声でレイに耳打ちした。



「レイ、落ち着け。自分の名前が使われた上に、偽物の質が悪かったからといってそう怒るな。

…実はお前のファンかもしれないぞ。」



「ふざけんな…!男にファンになられたってうれしくねぇよ。

このまま放っておいたらギルの名がけがれる。黙ってられるか…っ!」




レイが私に聞こえない程度の大きさのドスの利いた声でロディに反論する。



その間、シルバーナさんは固まったまま
一言も言葉を発しなくなっていた。



お…怒っちゃったかな…?

相当ショックを受けたよね?



私は、今にもカウンターから飛び出してきそうなレイへと視線を向ける。



…もう、レイってば…!

“ギルは偽物だ”とか言ったらシルバーナさんが困惑するの分かってたはずなのに…!



すると、ロディが何かに気づいたように声を上げた。



「まさか…、さっきタリズマンが言っていた“ギル”は、シルバーナさんの彼氏のことじゃないのか?」






その言葉に、私とレイは目を見開く。


た…確かに、“自称ギル”なんだから、ギルのフリをして街中に出ていてもおかしくはない。


そしてマヌケなことに、昨夜、運悪くタリズマンに見つかって、捕まりそうになったんだ。



と、その時

シルバーナさんが、やっと真実を全て受け入れたように、はっ!と我に返った。



そして、私たちに向かって覚悟を決めたように口を開く。



「…皆さんの意見を聞いて、ようやく目が覚めました。

…今考えてみれば、彼氏のギルが魔法を使ったところは一度も見たことがありませんわ。」



それを聞いて、レイがシルバーナさんに向かって声を上げる。



「魔法も使えなかったのかよその男!話にならねぇな…。

って言うか、彼氏のこと“ギル”って呼ぶな。背中がぞわぞわする…っ。」



シルバーナさんは、身震いするレイを申し訳なさそうな瞳で見つめると

すっ、とカバンから一枚の封筒を取り出した。



…?



その封筒に視線が釘付けになる私たちに、シルバーナさんは静かに言う。



「次の週末、私の家で父が主催の社交パーティが開かれますの。

父の仕事の関係者が集まる会なのですが、ギルのこともお忍びで呼んであります。」