ガチャンッ!!!!



その瞬間、カウンターから大きな音がした。


私は、ただただ、目を見開いてシルバーナさんを見つめることしかできない。



「ギルの………彼女…?」



ロディは、そう呟いて

カウンターへ、ちらり、と視線を向けた。


レイは全力で首を横に振る。



私の背後で行われているレイとロディの無言の会話に、私は気づく余裕もなかった。



その時、ロディが躊躇しながらシルバーナさんに声をかける。



「…ギルはそういう存在を作らない男のはずなんだが…?」



すると、シルバーナさんは肩に提げていたバッグをごそごそとあさりながら答えた。




「そんなことありません!

ちゃんと、証拠の写真だってありますわ!」




「「「えっ?!」」」




私たちは驚いて声を上げ、急いでシルバーナさんに近づく。


そして、彼女が取り出した一枚の写真に、まるで久しぶりにエサを与えられた魚のように集まり、覗き込んだ。




「「「っ!!!!!」」」




そして、「いつも持ち歩いてるんですの。」と頬を赤くするシルバーナさんの前で絶句し、固まる。



私は、まるで簡単すぎる間違い探しをするような気持ちで写真を見つめた。



…に…似てない…。

似てないどころか、全くの別人だ…!



ギルと同じなのは、男性だということと、髪の毛の色が黄金だってことぐらい。




と、その次の瞬間

レイが動揺を隠せないように大声で叫んだ。




「な…なんだ!このブサイクは………」


「レイ、ストップ!!」



私は、もがっ!とレイの口を必死に手で塞ぐ。



言いたいことは、痛いほどよく分かるけど、それ以上は言っちゃダメ…っ!!



ちらり、とシルバーナさんを見ると、彼女はニコニコしたままだ。



…ほっ。

どうやら、ギリギリ聞かれなかったみたい。



「あの…どうかされましたか?」



シルバーナさんがおずおずとそう尋ねる。


すると、ロディが、心がここにないような、ぽろり、と無意識に出たような声で答えた。




「いや…、ギルは顔だけは無駄に良いはずなんだが……

偽物がこんなに整ってないとは驚きで……」



「ロディ、ストップ!!」




シルバーナさんは、きょとん、とした顔で私たちを見る。


どこか気まずい雰囲気に、私たちは言葉を発せない。



すると、複雑な顔をしたロディがレイの腕を掴んで、コソコソとカウンターへと入っていった。


そして、小さな声で何かを話し込んでいる。




「…“ギル”。少しでも疑った俺が悪かった。

嬢ちゃん一筋のお前が、彼女なんて作るわけなかったな。」



「当たり前だろ!!

…っていうか、何だよあの写真の男!!
“あれ”が俺…?!」




な…何を話してるんだろう…?