私が、頭の中であれこれ考え始めた

その時だった。



キィ………






木の軋む音に、部屋の中にいた私たちは全員扉へと視線を向ける。



また、タリズマンが来たの…?



そう思って、ぎゅっ!と手に持つ布巾を握りしめた瞬間

私の目に映ったのは、綺麗な赤い髪をした華奢な女性だった。



…!

お客さん…かな…?



レイとロディも、どこか、ほっ、としたように呼吸をした。

レイは「今日はやけに昼間の客が多いな…」と呟き、じっと女性を見ながら口を開く。



「悪いが、酒場は夕方からなんだ。

…コーヒーぐらいなら出せるんだけど…。」



すると、女性は、はっ!としたようにまばたきをして、少しおどおどしながらレイに答えた。



「あ…あの、お酒を飲みに来たのではないのです。

私の名前はシルバーナ。…ある人を訪ねて来たのですが……」



すると、何かを言いかけた彼女は、私を見るなり目を見開いた。



…えっ…?

な…なに……?



じっ、と見つめられて、私は少し動揺する。



と、その時

シルバーナさんが私に向かって口を開いた。



「もしかして…あなたが“ルミナさん”ですか?」






その問いかけに、私はぎこちなく頷き答える。



「はい、そうですが……。」



この人、私のことを訪ねて来たの…?


いくら考えても、こんな綺麗な女性の知り合いなんていない。



レイとロディも、黙って私とシルバーナさんを見つめている。




すると、次の瞬間

シルバーナさんが、がばっ!と私に抱きついた。



?!


えぇっ?!

い…一体、どうしたの…?!



私が慌てて彼女を見た、その時

シルバーナさんは、酒場中に響く大声で爆弾発言をした。




「お願いです、ルミナさん!

私のギルと、別れてください……っ!!」




!!!





「「はぁっ?!」」




私が固まると同時に、レイとロディのうわずったような声が響く。



え…?え?

今、シルバーナさんは、なんて言った…?




“お願いです、ルミナさん!

私のギルと、別れてください……っ!!”




状況が飲み込めず、私は必死に心を落ち着けながらシルバーナさんに尋ねた。




「わ、私はギルと付き合ってるわけじゃ…

あの……“私のギル”っていうのは……?」




すると、シルバーナさんは、ぱっ!と私から離れて、真剣な瞳をしながら私に答えた。




「私は、“ギルの彼女”です。」