その時、ミラさんが冷静な口調でガロア警部に言った。
「アリバイがあるのは認めますが…
彼女はともかく、この情報屋を“シロ”だと断定するには早すぎます。」
どき…!
私はミラさんの言葉に動揺する。
…ロディが、疑われてる…?
私が不安になり、ちらり、とロディを見ると
ロディは小さくタバコの煙を吐きながら
ふっ、と不敵に笑って口を開いた。
「…俺は別に疑われてたって構わない。
俺がギルと繋がってる、って証拠があるならいつでも捕まってやるよ。」
…!
余裕の笑みに、ミラさんは少し眉を動かすが再び氷のような無表情に戻ると、小さく言った。
「必ず尻尾をつかんでみせるわ。
情報屋。…いつかあなたを捕まえる。」
「…それは楽しみだな。
まぁ、あんたになら捕まってもいいが。」
「…!」
その時、ロディとミラさんの空気が変わった。
しかし、それは一瞬で
すぐ、二人は目を逸らす。
ロディの、冗談なのか本気なのかわからない言葉に、私とレイが緊張してなりゆきを見守っていると
ミラさんは、くるり、と私たちに背を向けて歩き出した。
「…行きましょう、ガロア警部。
もうこの酒場に用はありません。」
「あぁ、そうだな!
んじゃあ、お前ら。今度は疑われるような真似はすんなよ!じゃあな!」
…あ…。
挨拶をする間もなく、タリズマンの二人は酒場の扉を開けて、風のように出て行ってしまった。
しぃん…、となる部屋に、レイの緊張から解放されたような声が響く。
「おい、ロディ。あんまり挑発するようなことを言うなよ。
お前が捕まったら、ギルにとって結構痛手なんだからな。」
「あぁ、悪い。でも、心配するな。
…俺は捕まったりなんかしないさ。」
タリズマンがいなくなり、私も胸をなでおろす。
そして、二人の会話を聞きながら、ふと頭の中に疑問が浮かんだ。
…レイは、ロディがギル専属の情報屋ってことを知ってるんだ…?
ギルがレイに伝えたのかな?
その時、ロディが顎に手を当てながら真剣な顔で呟いた。
「…それにしても…。昨日、ギルは街に出ていない。
タリズマンに目撃されるはずないんだが…」
!
その言葉に、私はとっさにロディに尋ねた。
「それ、どういうこと…?」
すると、ロディは何かを考え込むように低い声で答える。
「ギルが動く時は、嬢ちゃんに危険が迫った時だけなんだ。
…普通の闇を始末するだけなんて、ありえない。」
…!
私は、その言葉に、はっ!とした。
…ということは、昨日タリズマンに目撃されたギルは、“偽物のギル”ってこと…?
どくん!と、胸が鳴って、嫌な予感がする。
…一体、どういうこと…?