「やぁ、ルミナ。

次に会ったら言おうと思ってたことがあったのを忘れてて。追いかけてきちゃった。」





ルオン…!


急に現れた少年に、つい身構える。


レイとモートンに言われた言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡った。



“ルオンに近づいてはいけない”



どくん、と心臓が音を立てた時

ルオンが私の様子に目を細めた。


そして、今まで見たこともないような冷たい笑みを浮かべ口を開く。



「…その顔。本当に考えていることが分かりやすいね。

僕の正体、知っちゃったみたいだね。あのはぐれ魔法学者にでも聞いた?」



…!


ルオンは、今まで付けていた仮面を外したかのように

急に声のトーンが変わった。



ぞくり、と体が震えるが、私は動揺を隠してルオンに答える。



「…ダウトじゃないって言ったのは、嘘だったのね。」



すると、ルオンはくすくすと笑って答えた。



「ううん。僕は嘘なんてついてない。

奴らが勝手にボスだって言ってるだけで、こっちは仲間なんか作った覚えないよ。」



ルオンは、一呼吸おくと、碧色の瞳を微かに光らせた。


彼の口から、聞き覚えのある低い声が聞こえる。



『僕はダウトを利用してるだけさ。

使えないと判断した奴は、その瞬間から僕の“敵”となる。』






この声は、研究所跡地でラルフと話していたエンプティの声…!


ギルが、魔力で姿形や声を変えられると言っていた。


ルオンは、魔力でエンプティになりきっていたんだ…!



ルオンは、瞳の光を、ふっ、と消すと

一歩ずつ私に向かって歩み寄る。


びくっ、と震える私の反応を楽しむように、ルオンは私の目の前で立ち止まった。



「…そんなに怯えないでよ。

僕は、“言おうと思ってたこと”があって来ただけだからさ。」



“言おうと思ってたこと”…?


警戒しながらルオンを見つめると

ルオンは私をまっすぐ見つめ返して口を開いた。



「研究所跡地で言ったでしょ?

“今度は、ルミナの目の前で、“二代目”の正体を暴いてあげる”って。」



「!!」



私は、ルオンの言葉に目を見開いた。


獲物をとらえたような鋭い視線から逃れることが出来ない。



…“二代目の正体”…。



それは、ずっと心に引っかかっていたこと。


でも…。


私は、ぐっ、と手のひらを握りしめてルオンに言った。



「…私は、ギルが自分から正体を言ってくれるまで待つわ。

ルオンから聞こうとは思わない…!」



「…!」